抹茶ブームの光と影 いま日本茶の世界観をどう届ける?
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抹茶ブームの光と影 いま日本茶の世界観をどう届ける?
今、世界中が抹茶に注目している一方で、国内ではペットボトル飲料の値上げなど、私たちの生活にも影響が広がっています。
なぜ抹茶はここまで人気を集めているのでしょうか。
今回は、ブームの裏側で「現場で起こっていること」や「品質をめぐる課題」まで深掘りしていきます。
この記事を読むことで、抹茶本来の価値を見極めるための視点と、日本茶のこれからを考えるヒントが見えてくるはずです。
なぜ世界で「抹茶」がここまで人気なの?

「抹茶を原料として扱いたい」
そんな相談が、ここ最近現場から聞こえてくるようになりました。
世界的な抹茶ブームを背景に、飲料やお菓子、食品加工向けの需要が急速に広がっているためです。
なかでも抹茶ラテは海外でも定番となり、世界各地のカフェで当たり前のように提供されつつあります。
抹茶がここまで広がった背景には、飲み物に限らず「原料」として使える柔軟さにあります。
爆発的に人気になったのはここ1〜2年のことですが「抹茶の需要は高まっていく」ということ自体は、以前から予測されていました。
実際に鹿児島県でも、抹茶の原料となる「てん茶」の生産を数年前から拡大し始め、令和6年度の生産量は全国1位に輝いています。
それでも今、抹茶の供給量は需要に追いついていません。
今知りたい、抹茶ブームの裏側3選

1. 煎茶用の茶葉も不足している
実は今、抹茶だけではなく煎茶も不足しています。
「抹茶人気が、煎茶にどんなつながりがあるの?」と疑問を持つ人もいるでしょう。
これは、今まで煎茶の生産をしていた農家がてん茶に栽培を転換したことや廃業に伴い、煎茶の作り手が減っているということです。
日本の大手飲料メーカーのペットボトル緑茶飲料は、まさしくこの影響を受け、今年の1月に大幅な値上げを発表しました。
当たり前に飲めていた煎茶が不足することで「日常のお茶」だった存在も、静かに価値を上げ始めているのです。
2. “抹茶風の加工品”が市場に増えている
抹茶の需要が急拡大するなかで、海外市場では、品質にばらつきのある商品が「抹茶」として流通するケースも見られるようになりました。
具体的には、見た目が似ている粉末緑茶を混ぜる、あるいは粉末緑茶を抹茶として売るというようなやり方です。
これらは本来の製法(被覆栽培や石臼挽き)を経たものとは異なります。
抹茶に親しんできた人であれば「これは本当の抹茶ではない」と気づけるでしょう。しかし、抹茶に初めて触れる人にとっては、その違いを見分けるのは簡単とは言えないのではないでしょうか。
美味しさや健康的なイメージだけでなく「どのように抹茶は作られているのか」を含めて正しく伝えていくことが、これからの日本人に求められている役割なのかもしれません。
3. 抹茶づくりは想像以上に時間と手間がかかる
非常に手間と時間をかけてつくられている、抹茶の原料のてん茶。
収穫前には、長期間覆いをかける「被覆栽培」を行います。
あえて日光を遮るのには「茶葉を鮮やかな緑色に保つ」「葉を薄く柔らかく育てる」そして「まろやかな旨味を引き出す」といった大きく3つの理由があります。
日光を遮られることによって、茶葉の緑色の色素を増やす動きが活発になり、うま味成分であるテアニンの減少を抑えられるのです。
その後もさまざまな工程を経て、仕上げには石臼(いしうす)で丁寧に挽く必要があります。
石臼で挽ける量は1時間あたり40〜50g程度。まさに時間をかけて進めていく作業です。いっぺんに挽くと、香りや色味といった品質を損ねてしまうためです。
大量生産が難しい背景には、こうした繊細な工程の積み重ねにあるのです。
煎茶より抹茶に手が伸びやすい理由を考えてみた

抹茶と煎茶は、どちらも同じチャノキが原料であり、基本的な成分や効能に多くの共通点があります。
両方ともいわばスーパーフードということには変わりありませんが、現在海外で注目の的になっているのは「抹茶」のほうです。
この背景には「飲みやすさ」と「合わせやすさ」が関係しているのではないでしょうか。
日本ではあまり考えられないことですが、海外では煎茶にも砂糖やハチミツがよく入れられています。
海外旅行で緑茶を飲み、その味の違いに驚いた経験がある人も少なくないでしょう。
海外の人にとっては、煎茶そのものの青々しさや苦味よりも、甘味が入っているほうが飲みやすく感じられるようです。
たしかに、抹茶はラテやスイーツとの相性がよく、飲み物以外でのアレンジの幅が広いですよね。
ビーガン志向の場合は、牛乳ではなくオーツミルクやココナッツミルクと組み合わせて楽しんでいるのだとか。
また、鮮やかな緑色でインパクトが強い見た目も、人気を後押ししているといえるでしょう。
抹茶が日本の文化として定着するまで

抹茶のルーツは、実は日本ではなく中国にあります。
当時、中国で主流だった「点茶法(粉末にした茶を湯で点てる飲み方)」を、鎌倉時代に僧侶の栄西が日本へ持ち帰ったのが始まりとされています。
興味深いのは、発祥の地中国ではお茶を粉末にする製法が次第に姿を消していったのに対して、日本では独自の文化として発展していったということです。
栽培や改良が重ねられて、現在の抹茶の味わい・見た目へと洗練されていきました。
こうして現代では「抹茶=日本の文化」として定着しています。
抹茶ブームの先にある日本茶のこれから

抹茶を入り口に、日本茶全体の価値が見直されていくことは喜ばしいことです。
しかし、抹茶は単なる原料やトレンドではありません。
日本の先人たちが長い歴史をかけて築き上げてきた「文化」なのです。
茶道では、味や見た目と同じくらい、深い精神性や美意識を大切にしてきました。
お茶を点てる時間に生まれる心の静寂。
相手を思いながらお茶を用意する、おもてなしの心。
こうした背景があって、今の抹茶のかたちがあります。
今後は日本ならではの文化、そして世界観を海外へ届けていくという姿勢が、より重要になっていくのではないでしょうか。
「質を守り続ける生産者の努力」と「作る背景を知ったうえで選ぶ消費者の意識」
どちらも欠かせません。
抹茶に限ったことではありませんが
・原産地の表示を見る
・製法や生産者の情報を確認する
・極端に安いお茶に注意する
といった意識を心がけましょう。
1人ひとりのちょっとした意識が、日本茶の未来を明るいものにしていくはずです。
まとめ

抹茶ブームの裏側で起きていること
・てん茶への栽培転換増加による煎茶の不足
・ペットボトル緑茶などへの影響
・本来の品質基準とは異なる商品の広がり
・抹茶は大量生産が難しい
Point|需要の拡大は、同時に供給・品質の課題も生み出している
なぜ抹茶が世界で広がったのか
・甘味やミルクとの相性の良さ
・鮮やかな緑色という視覚的インパクト
・ヘルシー、スーパーフードというイメージの定着
Point|「合わせやすさ」と「扱いやすさ」が、世界を惹きつけている
抹茶はトレンドではなく「文化」
・抹茶の起源は中国にあるが、その後日本で独自に発展した
・やがて茶道と結びつきながら精神性を含む文化へと洗練された
Point|抹茶は単なる原料ではなく、先人たちが磨き上げてきた日本の文化そのもの
今後は世界が認めた存在価値を、1番身近にいる私たち日本人が正しく理解し伝えていくことが、大切になっていくでしょう。
その取り組みが、鹿児島や宇治といった産地を守り、日本茶の未来をかたちづくる大きな一歩につながっていきます。
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